月桂樹の葉gift
寄贈して頂いたマージナルプリンス作品を展示しています。
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■作者:シハル姉さん
■シルフェ×レオシュ その後
※Startseite=ドイツ語で「故郷」
■シルフェ×レオシュ その後
※Startseite=ドイツ語で「故郷」
たった今アルフォンソ学院を卒業し、家に帰ってきた俺。
深呼吸をしてドアを開ける。
「ただいま!!」
ドアを開けてすぐに迎えてくれたのは母。
「お帰りなさい。」
優しく微笑んで少し残念そうに連絡を入れてくれれば迎えに行ったのに、と言われてしまった。
「ごめんごめん。驚かせたかったんだよ。」
「シルフェ、帰ったか。」
「父さん。ただいま。」
「お帰り。学院はどうだった?」
「すごく楽しかったよ。たくさん勉強もできたし。それに大切な人ができた。」
レオシュが卒業するとき連絡を入れて大切な人だから俺が帰るまで住まわせてあげてほしいと頼んだ。
両親は詳しく聞いてくることもなく了承してくれた。
「レオシュー!帰ってきたよー!」
部屋の奥にいるであろうレオシュを呼ぶ。
一年振りの再会。早く会いたい!
「お、お帰り・・・というべきなのか?」
「!?」
一年振りに会った愛しい人。美しさには一層磨きがかかったようだけど何より・・・。
「髪が短い!!」
「ああ、うっとうしかったから切ったんだ。」
あまりにもあっさりと言われ拍子抜けしてしまう。
「えと、まあいいや。後でじっくり話そう。」
改めて父さんと母さんにレオシュを紹介する。
「父さん、母さん、改めて紹介するよ。この人が俺の大切な人レオシュだよ。」
父さんと母さんは特に驚いた様子もなく、黙って聞いてくれている。
「それで、近々俺はレオシュを連れてどこか家を見つけて二人で住もうと思ってる。」
「・・・それは、この家を出るということ?」
「うん。そうなるね。」
「どうして?せっかく帰ってきたんだからこのままここで暮らせばいいじゃない。」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど俺はやっぱり二人の本当の子供じゃないからいつまでもここでお世話になってるわけにはいかないよ。」
「あなたはもう私達の子供なのよ。遠慮なんかしないでここに居てくれて構わないのよ?」
「ありがとう。でもやりたいことを見つけたんだ。だからどちらにしといずれはここを出ることになるしそれが少し早まったと思ってほしい。」
母さんの言葉はすごく嬉しいけど、これは俺のケジメだから。
「もちろん、今までお世話になった分はきちんと返すから安心して。」
「返さなくて良い。」
今まで黙っていた父さんが口を開いた。
「お前は私達の息子だ。親が子供の世話をするのは当たり前のこと。それでも返したいというならもうしばらくこの家にいなさい。それが私達の望みだ。」
「父さん・・・ありがとう。」
「良い環境に恵まれたな。」
隣でレオシュがそっと呟いた。
「うん。最高の両親だよ。」
両親との話を終えて落ち着いた俺はレオシュに髪を切ったことについて尋ねてみた。
「なあ、なんで髪切っちゃったの?」
「さっき言っただろう。うっとうしかったんだ。」
「だって学院にいたときあんなに大事にしてたじゃん。意味があったんだろ?髪伸ばしてたのって。」
「今となってはもう意味のないことだ。俺の隣にはお前がいる。」
「レオシュ・・・。ありがと。ロングも綺麗だったけどショートも似合うね!」
美人に磨きがかかって本当に一年前よりもっと綺麗だ。
「そうだ、レオシュ。俺ね、医者を目指すことにしたよ。」
照れたレオシュが怒り出す前に話題を変える。
「医者を?」
「そう。俺シュヌーシアだっただろ?体調崩すヤツら多くてさ。面倒見てるうちに医者もいいかなーって思ったんだ。医者になってアルフォンソ学院に戻る。」
大切な人をこの手で守れるように俺は医療を学ぶ。
「そうか。奇遇だな。俺も医者ではないが学院には戻りたいと思っていたんだ。」
レオシュは教師という職に興味を持っていることを話してくれた。
俺と離れている間にレオシュも色々考えて学院で学ぶことの楽しさを教えられたから自分も教師という職に就きたいと思うようになったらしい。
「じゃ、目指すところは一緒だね。良かった。レオシュがもし別の道を考えていたら無理やり連れてくとこだったよ。」
「なっ!俺の意思を無視して連れていくつもりだったのか!?」
「なるべくレオシュの意思は尊重したいと思ってるけど、離すつもりはないからね。」
ようやく手に入れた愛しい人を手放すわけがない。
「以前から勝手なやつだと思ってはいたが・・・。」
怒りを通り越して呆れた様子のレオシュ。
「せめて連れて行くのなら了解を取ってからにしてくれ。」
「オーケー。連れてくときは確認取るよ。」
ノーとは言わせないけどね。
「二人ともー。夕飯できたわよー。」
母さんから呼ばれて食卓へ移動する。
「わ、すごい豪華。どうしたの?」
「シルフェが帰ってきたからよ。さ、食べましょう。」
母さんは嬉しそうに微笑む。
『いただきます』
父さん、母さん、レオシュ、俺。四人で食卓を囲む。
「そういえば、今だから言うけど私実はレオシュくんのこと最初女の子だと思ったのよ。」
「レオシュ美人だしねー。俺も最初はびっくりしたよ。」
「シルフェ!」
さすがにちょっと怒った様子のレオシュ。
「ごめんなさいね。私、娘も欲しかったからシルフェが大切な人が来るって言ったときつい女の子が来ると思い込んでしまったのよ。」
よく考えてみれば男子校なのにね、と笑う母さん。
けど間違えるのも無理ないと思う。こんな美人だったら誰だってすぐには男だって気付かないだろう。
とりあえずレオシュが怒るから話題を変えないと。
「あのさ、母さん娘が欲しいの?」
「そうなの。もちろんシルフェは大事な息子だけど娘も欲しかったのよ、私。」
「じゃあ俺のいた施設から女の子もらってきなよ。」
施設は居心地いいけど内心親と暮らしたい、引き取ってもらいたいと思ってるやつがほとんどだ。
父さんと母さんに引き取ってもらえたらすごく幸せに暮らせるだろうし二人も俺がいなくなっても娘ができれば寂しくなくなるだろう。
「でも・・・。」
母さんはちらりと父さんを見る。
「明日は休みだ。散歩がてら行ってみるのもいいだろう。」
「じゃあ決定だね。明日皆で行ってみよう!」
「・・・俺も行くのか?」
「もちろん!レオシュにも俺を育ててくれたもう一つの家族のこと知って欲しいし。」
そう言えばレオシュは断れるはずもなく小さくわかったと頷いた。
翌日俺達はくたびれた建物に『クリューナ』と書かれている施設へ行った。
「ここが俺の育った施設だよ。とは言っても5歳のときに引き取られたからあんまり思い出とかはないけどね。」
言いながら建物のドアを軽くノックして開ける。
「・・・どなたですか?」
いきなりドアが開いたことに怪訝そうな顔でこちらを見てくる人物。
「vater!!(父さん!!)」
幼かった俺は施設を経営しているこの人のことを父と呼んでいた。
懐かしさのあまりつい父さんと呼んでしまったが成長した俺を見て誰だかわからないといった様子だ。
「えっと、シルフェです。お久しぶりです、Mr.トラークル。」
「シルフェ!?本当にあのシルフェなのか!?」
「はい。父さん、母さん、レオシュ、こちらはこの施設を経営してるMr.トラークル。
Mr.トラークル、こちらは俺の両親と恋人。」
「なっ!シルフェ!そう軽々しく人に言うな!!」
恋人と紹介しても否定しなくなったことはすごい進歩だと思う。俺よく頑張った!
「じゃあ何て紹介したらいいの?」
「・・・友人、が無難だろう。」
「わかったよ。じゃあ今度誰かに紹介するとき覚えてたらそう言うよ。」
確実に忘れるけどね。
「シルフェ・・・随分大きくなったね。その分だとご両親ともうまくいっているようだね。」
「はい。とても良くしていただいています。」
「それで今日は何か用事でも?」
「実は母が娘も欲しいと言うもので。」
「なるほど。それならとりあえず中へお入りください。」
促されて中へ入るとたくさんの子供達がいた。
ここに居たのは随分前のことだからもう知っている子がいてもわからないだろう。
父さんと母さんはどの子を引き取るか話し合っている。
子供達も誰かが引き取られるようだということはなんとなくわかるらしく自らをアピールする子や緊張しているのかほとんど微動だにしない子など様々だ。
「シルフェ、お前は意見しないのか?」
「んー、だって俺はすぐ家を出ちゃうからね。母さんと父さん二人で決めるのが一番いいと思う。」
「そうか・・・。」
レオシュはそれきり何も言わなかった。
代わりに声をかけてきた少女が一人。
「シルフェ?あなたシルフェなの?」
ハニーブロンドの髪を肩まで伸ばした少女が買い物帰りの様子でドアの前に立っていた。
「ああ、セシルお帰り。」
トラークルが少女をセシルと呼んだ。
「セシル?もしかしてあの、セシルなのか?」
幼い頃ここで一緒に育った少女。セシルも俺と同様生まれてすぐにここに置き去りにされていた。
彼女は俺より3歳下で一緒に居たのは2年くらいだったが彼女の名前は俺がつけたから今でもよく覚えている。
「本当にシルフェなんだ!お帰り、シルフェ!!」
荷物を置いたセシルが俺に抱きついてきた。
「元気だったか?セシル。」
「うん!シルフェも元気そうだね。あれ?そういえばそちらの美人さんは?」
セシルがレオシュを見て首をかしげる。
「こっちは俺の大切な人。」
「・・・初めまして、シルフェの友人のレオシュです。」
友人という部分を強調して言われた。恋人とは言わなかったのにそれでもダメだったらしい。
「けどよく俺のこと覚えてたな。まだ小さかっただろ、お前。」
「忘れるわけないよ!シルフェはあたしにとってお兄ちゃんで名付け親で大切な家族だったから・・・。」
「サンキュ。俺もお前のことはずっと覚えてたよ。」
ちらりと隣のレオシュを見ると特に不機嫌そうな様子もなく俺たちを見ていた。
・・・ヤキモチとか妬いてくれないのかな。信頼されてるのか愛されてないのか。ちょっと不安になるぞ。
「レオシュ、セシルは俺にとってすごく大切な家族で妹みたいな子なんだ。」
「ああ、だろうな。見ていればわかる。」
そう言ったレオシュの瞳がふっと優しく細められた。
レオシュも家族のこと思い出したのかな。そう思わせる表情だった。
「あら、シルフェ。その子は?」
母さんと父さんが話し合いを終えたのかこちらにやってきた。
「紹介するよ。この子はセシル。俺がまだここに居たときからの知り合いで、俺の妹・・・みたいな子なんだ。」
俺の言葉を聞いた母さんは父さんを見て父さんが頷いた。
「シルフェ、私達の娘を決めたわ。」
「そっか。で、誰にするの?」
「セシルちゃん、私達の娘になる気はない?」
母さんは俺の問いに俺ではなくセシルに向かって問いを返した。
「え!?私が!?え、でもだって私もう15ですよ?」
大抵引き取るならばこれから育てるつもりでもっと幼い子を引き取る。
だからセシルが驚くのも無理はない。俺もまさかセシルを引き取るとは思わなかった。
「私達、シルフェを育てて疲れてしまったの。あなたのような可愛らしい娘ができたらすごく嬉しいわ。だめかしら?」
セシルは困った顔でトラークルを見る。
「お行きなさい。せっかく君を娘にしたいとおっしゃっているんだ。君はその方達の娘になってこれからたくさんの幸せを掴みなさい。」
「お父さん・・・わかった。あたし行くね。」
セシルは俺の父さんと母さんに向き直って頭を下げた。
「これからお世話になります!よろしくお願いします!」
「こちらこそ。私たちのことは本当の親だと思って思い切り甘えてちょうだいね。」
「はい!」
そしてセシルは俺たちと共に家に帰った。
母さんは今まで我慢してきた分を発散するかのようにセシルを連れて街に出てはあれやこれやと服やバッグを買ってきた。
「セシルちゃん、次はこれ着てみて。」
「は、はい!」
浮かれながらセシルを着せ替え人形にする母とどこか嬉しそうに着せ替え人形にされている妹。
「セシル、母さん浮かれてるだけだから疲れたら疲れたって言っていいんだぞ?」
「疲れてないから大丈夫だよ。それに色んな服が着られて私も嬉しいの。クリューナに居た頃はこんな風にオシャレとか楽しむ余裕はなかったから。」
「そっか。じゃあ疲れない程度に母さんに付き合ってやってくれ。俺じゃ付き合えないしな。」
俺が笑うとセシルも嬉しそうに笑った。
着せ替え人形にされていたセシルは今度は母さんからピアノを教わっている。
そういえばこの家にはピアノがあったんだと思い出す。
母さんが時々弾いていたのは知っていたし俺も最初にここに来たときはピアノに触らせてもらった。
けど俺は楽器には全く興味を示さなかった。だから母さんも無理に教えようとは思わなかったんだろうな。
「良い子だな。」
「レオシュ。なんか意外だな。レオシュは子供とか嫌いだと思ってたからセシルのことうっとうしく思うかと思ってた。」
「彼女は子供ではないだろう?それに元々子供は嫌いじゃない。特に好きでもないが。」
「そうなの!?なんか俺まだまだ知らないことだらけだね。」
「・・・聞かれれば答えてやらなくもない。」
目線は合わせず横を向いて言うレオシュ。
「本当だね?じゃあ聞かせて。レオシュは俺のこと好き?どこが好き?」
そっと頬に手をかけてこちらを向かせる。
少し赤く染まった頬と泳ぐ視線。
「ね、教えて。」
「ッ・・・強引なところはあまり好きではない。」
「じゃあ好きなところは?」
「くっ!自分で考えろ!!」
言って俺の脚を蹴って逃げてしまった。
「聞けば教えてくれるって言ったのに。仕方ない。今度ベッドの中で聞いてみよ。」
俺の独り言が聞こえたのか聞こえなかったのかレオシュは立ち止まらなかった。
いつか、医者になって学院に戻ったら父さん母さんとセシルに学院を紹介しよう。
俺とレオシュの出会いの場であり、大切なことを教えてもらったあの場所を。
END
■管理人からのお礼
とにかく、「くっ!自分で考えろ!!」と言ってシルフェ君の脚を、
蹴って逃げたレオシュが可愛い過ぎるわけですが(笑)
>ノーとは言わせないけどね。
そんな自信過剰具合も大好きです。
>俺よく頑張った!
>確実に忘れるけどね。
シルフェ君作品はこういう面白い一言が多くて好きです。
>・・・ヤキモチとか妬いてくれないのかな。
セシルに抱きつかれて、レオシュが妬いてくれないか気にしてるシルフェ君が可愛いです(笑)
>「なあ、なんで髪切っちゃったの?」
髪を切った理由を「うっとうしかったから切った」と答えるレオシュですが、
かつて愛した人が髪の長い人だったことを考えると、髪を切るという行為は、
レオシュなりにシルフェが一番の存在であることを認めたということなのだなと思い、
非常に感慨深いものでした。シルフェ君が言うように、
「ロングも綺麗だったけどショートも似合う」のでしょうね。
そして、二人とも聖アルフォンソ学院の教員を目指すことになりました。
相談していたわけではないのに、二人とも学院の教員になりたいと考えていたのですね。
次作が先生編です!
深呼吸をしてドアを開ける。
「ただいま!!」
ドアを開けてすぐに迎えてくれたのは母。
「お帰りなさい。」
優しく微笑んで少し残念そうに連絡を入れてくれれば迎えに行ったのに、と言われてしまった。
「ごめんごめん。驚かせたかったんだよ。」
「シルフェ、帰ったか。」
「父さん。ただいま。」
「お帰り。学院はどうだった?」
「すごく楽しかったよ。たくさん勉強もできたし。それに大切な人ができた。」
レオシュが卒業するとき連絡を入れて大切な人だから俺が帰るまで住まわせてあげてほしいと頼んだ。
両親は詳しく聞いてくることもなく了承してくれた。
「レオシュー!帰ってきたよー!」
部屋の奥にいるであろうレオシュを呼ぶ。
一年振りの再会。早く会いたい!
「お、お帰り・・・というべきなのか?」
「!?」
一年振りに会った愛しい人。美しさには一層磨きがかかったようだけど何より・・・。
「髪が短い!!」
「ああ、うっとうしかったから切ったんだ。」
あまりにもあっさりと言われ拍子抜けしてしまう。
「えと、まあいいや。後でじっくり話そう。」
改めて父さんと母さんにレオシュを紹介する。
「父さん、母さん、改めて紹介するよ。この人が俺の大切な人レオシュだよ。」
父さんと母さんは特に驚いた様子もなく、黙って聞いてくれている。
「それで、近々俺はレオシュを連れてどこか家を見つけて二人で住もうと思ってる。」
「・・・それは、この家を出るということ?」
「うん。そうなるね。」
「どうして?せっかく帰ってきたんだからこのままここで暮らせばいいじゃない。」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど俺はやっぱり二人の本当の子供じゃないからいつまでもここでお世話になってるわけにはいかないよ。」
「あなたはもう私達の子供なのよ。遠慮なんかしないでここに居てくれて構わないのよ?」
「ありがとう。でもやりたいことを見つけたんだ。だからどちらにしといずれはここを出ることになるしそれが少し早まったと思ってほしい。」
母さんの言葉はすごく嬉しいけど、これは俺のケジメだから。
「もちろん、今までお世話になった分はきちんと返すから安心して。」
「返さなくて良い。」
今まで黙っていた父さんが口を開いた。
「お前は私達の息子だ。親が子供の世話をするのは当たり前のこと。それでも返したいというならもうしばらくこの家にいなさい。それが私達の望みだ。」
「父さん・・・ありがとう。」
「良い環境に恵まれたな。」
隣でレオシュがそっと呟いた。
「うん。最高の両親だよ。」
両親との話を終えて落ち着いた俺はレオシュに髪を切ったことについて尋ねてみた。
「なあ、なんで髪切っちゃったの?」
「さっき言っただろう。うっとうしかったんだ。」
「だって学院にいたときあんなに大事にしてたじゃん。意味があったんだろ?髪伸ばしてたのって。」
「今となってはもう意味のないことだ。俺の隣にはお前がいる。」
「レオシュ・・・。ありがと。ロングも綺麗だったけどショートも似合うね!」
美人に磨きがかかって本当に一年前よりもっと綺麗だ。
「そうだ、レオシュ。俺ね、医者を目指すことにしたよ。」
照れたレオシュが怒り出す前に話題を変える。
「医者を?」
「そう。俺シュヌーシアだっただろ?体調崩すヤツら多くてさ。面倒見てるうちに医者もいいかなーって思ったんだ。医者になってアルフォンソ学院に戻る。」
大切な人をこの手で守れるように俺は医療を学ぶ。
「そうか。奇遇だな。俺も医者ではないが学院には戻りたいと思っていたんだ。」
レオシュは教師という職に興味を持っていることを話してくれた。
俺と離れている間にレオシュも色々考えて学院で学ぶことの楽しさを教えられたから自分も教師という職に就きたいと思うようになったらしい。
「じゃ、目指すところは一緒だね。良かった。レオシュがもし別の道を考えていたら無理やり連れてくとこだったよ。」
「なっ!俺の意思を無視して連れていくつもりだったのか!?」
「なるべくレオシュの意思は尊重したいと思ってるけど、離すつもりはないからね。」
ようやく手に入れた愛しい人を手放すわけがない。
「以前から勝手なやつだと思ってはいたが・・・。」
怒りを通り越して呆れた様子のレオシュ。
「せめて連れて行くのなら了解を取ってからにしてくれ。」
「オーケー。連れてくときは確認取るよ。」
ノーとは言わせないけどね。
「二人ともー。夕飯できたわよー。」
母さんから呼ばれて食卓へ移動する。
「わ、すごい豪華。どうしたの?」
「シルフェが帰ってきたからよ。さ、食べましょう。」
母さんは嬉しそうに微笑む。
『いただきます』
父さん、母さん、レオシュ、俺。四人で食卓を囲む。
「そういえば、今だから言うけど私実はレオシュくんのこと最初女の子だと思ったのよ。」
「レオシュ美人だしねー。俺も最初はびっくりしたよ。」
「シルフェ!」
さすがにちょっと怒った様子のレオシュ。
「ごめんなさいね。私、娘も欲しかったからシルフェが大切な人が来るって言ったときつい女の子が来ると思い込んでしまったのよ。」
よく考えてみれば男子校なのにね、と笑う母さん。
けど間違えるのも無理ないと思う。こんな美人だったら誰だってすぐには男だって気付かないだろう。
とりあえずレオシュが怒るから話題を変えないと。
「あのさ、母さん娘が欲しいの?」
「そうなの。もちろんシルフェは大事な息子だけど娘も欲しかったのよ、私。」
「じゃあ俺のいた施設から女の子もらってきなよ。」
施設は居心地いいけど内心親と暮らしたい、引き取ってもらいたいと思ってるやつがほとんどだ。
父さんと母さんに引き取ってもらえたらすごく幸せに暮らせるだろうし二人も俺がいなくなっても娘ができれば寂しくなくなるだろう。
「でも・・・。」
母さんはちらりと父さんを見る。
「明日は休みだ。散歩がてら行ってみるのもいいだろう。」
「じゃあ決定だね。明日皆で行ってみよう!」
「・・・俺も行くのか?」
「もちろん!レオシュにも俺を育ててくれたもう一つの家族のこと知って欲しいし。」
そう言えばレオシュは断れるはずもなく小さくわかったと頷いた。
翌日俺達はくたびれた建物に『クリューナ』と書かれている施設へ行った。
「ここが俺の育った施設だよ。とは言っても5歳のときに引き取られたからあんまり思い出とかはないけどね。」
言いながら建物のドアを軽くノックして開ける。
「・・・どなたですか?」
いきなりドアが開いたことに怪訝そうな顔でこちらを見てくる人物。
「vater!!(父さん!!)」
幼かった俺は施設を経営しているこの人のことを父と呼んでいた。
懐かしさのあまりつい父さんと呼んでしまったが成長した俺を見て誰だかわからないといった様子だ。
「えっと、シルフェです。お久しぶりです、Mr.トラークル。」
「シルフェ!?本当にあのシルフェなのか!?」
「はい。父さん、母さん、レオシュ、こちらはこの施設を経営してるMr.トラークル。
Mr.トラークル、こちらは俺の両親と恋人。」
「なっ!シルフェ!そう軽々しく人に言うな!!」
恋人と紹介しても否定しなくなったことはすごい進歩だと思う。俺よく頑張った!
「じゃあ何て紹介したらいいの?」
「・・・友人、が無難だろう。」
「わかったよ。じゃあ今度誰かに紹介するとき覚えてたらそう言うよ。」
確実に忘れるけどね。
「シルフェ・・・随分大きくなったね。その分だとご両親ともうまくいっているようだね。」
「はい。とても良くしていただいています。」
「それで今日は何か用事でも?」
「実は母が娘も欲しいと言うもので。」
「なるほど。それならとりあえず中へお入りください。」
促されて中へ入るとたくさんの子供達がいた。
ここに居たのは随分前のことだからもう知っている子がいてもわからないだろう。
父さんと母さんはどの子を引き取るか話し合っている。
子供達も誰かが引き取られるようだということはなんとなくわかるらしく自らをアピールする子や緊張しているのかほとんど微動だにしない子など様々だ。
「シルフェ、お前は意見しないのか?」
「んー、だって俺はすぐ家を出ちゃうからね。母さんと父さん二人で決めるのが一番いいと思う。」
「そうか・・・。」
レオシュはそれきり何も言わなかった。
代わりに声をかけてきた少女が一人。
「シルフェ?あなたシルフェなの?」
ハニーブロンドの髪を肩まで伸ばした少女が買い物帰りの様子でドアの前に立っていた。
「ああ、セシルお帰り。」
トラークルが少女をセシルと呼んだ。
「セシル?もしかしてあの、セシルなのか?」
幼い頃ここで一緒に育った少女。セシルも俺と同様生まれてすぐにここに置き去りにされていた。
彼女は俺より3歳下で一緒に居たのは2年くらいだったが彼女の名前は俺がつけたから今でもよく覚えている。
「本当にシルフェなんだ!お帰り、シルフェ!!」
荷物を置いたセシルが俺に抱きついてきた。
「元気だったか?セシル。」
「うん!シルフェも元気そうだね。あれ?そういえばそちらの美人さんは?」
セシルがレオシュを見て首をかしげる。
「こっちは俺の大切な人。」
「・・・初めまして、シルフェの友人のレオシュです。」
友人という部分を強調して言われた。恋人とは言わなかったのにそれでもダメだったらしい。
「けどよく俺のこと覚えてたな。まだ小さかっただろ、お前。」
「忘れるわけないよ!シルフェはあたしにとってお兄ちゃんで名付け親で大切な家族だったから・・・。」
「サンキュ。俺もお前のことはずっと覚えてたよ。」
ちらりと隣のレオシュを見ると特に不機嫌そうな様子もなく俺たちを見ていた。
・・・ヤキモチとか妬いてくれないのかな。信頼されてるのか愛されてないのか。ちょっと不安になるぞ。
「レオシュ、セシルは俺にとってすごく大切な家族で妹みたいな子なんだ。」
「ああ、だろうな。見ていればわかる。」
そう言ったレオシュの瞳がふっと優しく細められた。
レオシュも家族のこと思い出したのかな。そう思わせる表情だった。
「あら、シルフェ。その子は?」
母さんと父さんが話し合いを終えたのかこちらにやってきた。
「紹介するよ。この子はセシル。俺がまだここに居たときからの知り合いで、俺の妹・・・みたいな子なんだ。」
俺の言葉を聞いた母さんは父さんを見て父さんが頷いた。
「シルフェ、私達の娘を決めたわ。」
「そっか。で、誰にするの?」
「セシルちゃん、私達の娘になる気はない?」
母さんは俺の問いに俺ではなくセシルに向かって問いを返した。
「え!?私が!?え、でもだって私もう15ですよ?」
大抵引き取るならばこれから育てるつもりでもっと幼い子を引き取る。
だからセシルが驚くのも無理はない。俺もまさかセシルを引き取るとは思わなかった。
「私達、シルフェを育てて疲れてしまったの。あなたのような可愛らしい娘ができたらすごく嬉しいわ。だめかしら?」
セシルは困った顔でトラークルを見る。
「お行きなさい。せっかく君を娘にしたいとおっしゃっているんだ。君はその方達の娘になってこれからたくさんの幸せを掴みなさい。」
「お父さん・・・わかった。あたし行くね。」
セシルは俺の父さんと母さんに向き直って頭を下げた。
「これからお世話になります!よろしくお願いします!」
「こちらこそ。私たちのことは本当の親だと思って思い切り甘えてちょうだいね。」
「はい!」
そしてセシルは俺たちと共に家に帰った。
母さんは今まで我慢してきた分を発散するかのようにセシルを連れて街に出てはあれやこれやと服やバッグを買ってきた。
「セシルちゃん、次はこれ着てみて。」
「は、はい!」
浮かれながらセシルを着せ替え人形にする母とどこか嬉しそうに着せ替え人形にされている妹。
「セシル、母さん浮かれてるだけだから疲れたら疲れたって言っていいんだぞ?」
「疲れてないから大丈夫だよ。それに色んな服が着られて私も嬉しいの。クリューナに居た頃はこんな風にオシャレとか楽しむ余裕はなかったから。」
「そっか。じゃあ疲れない程度に母さんに付き合ってやってくれ。俺じゃ付き合えないしな。」
俺が笑うとセシルも嬉しそうに笑った。
着せ替え人形にされていたセシルは今度は母さんからピアノを教わっている。
そういえばこの家にはピアノがあったんだと思い出す。
母さんが時々弾いていたのは知っていたし俺も最初にここに来たときはピアノに触らせてもらった。
けど俺は楽器には全く興味を示さなかった。だから母さんも無理に教えようとは思わなかったんだろうな。
「良い子だな。」
「レオシュ。なんか意外だな。レオシュは子供とか嫌いだと思ってたからセシルのことうっとうしく思うかと思ってた。」
「彼女は子供ではないだろう?それに元々子供は嫌いじゃない。特に好きでもないが。」
「そうなの!?なんか俺まだまだ知らないことだらけだね。」
「・・・聞かれれば答えてやらなくもない。」
目線は合わせず横を向いて言うレオシュ。
「本当だね?じゃあ聞かせて。レオシュは俺のこと好き?どこが好き?」
そっと頬に手をかけてこちらを向かせる。
少し赤く染まった頬と泳ぐ視線。
「ね、教えて。」
「ッ・・・強引なところはあまり好きではない。」
「じゃあ好きなところは?」
「くっ!自分で考えろ!!」
言って俺の脚を蹴って逃げてしまった。
「聞けば教えてくれるって言ったのに。仕方ない。今度ベッドの中で聞いてみよ。」
俺の独り言が聞こえたのか聞こえなかったのかレオシュは立ち止まらなかった。
いつか、医者になって学院に戻ったら父さん母さんとセシルに学院を紹介しよう。
俺とレオシュの出会いの場であり、大切なことを教えてもらったあの場所を。
END
■管理人からのお礼
とにかく、「くっ!自分で考えろ!!」と言ってシルフェ君の脚を、
蹴って逃げたレオシュが可愛い過ぎるわけですが(笑)
>ノーとは言わせないけどね。
そんな自信過剰具合も大好きです。
>俺よく頑張った!
>確実に忘れるけどね。
シルフェ君作品はこういう面白い一言が多くて好きです。
>・・・ヤキモチとか妬いてくれないのかな。
セシルに抱きつかれて、レオシュが妬いてくれないか気にしてるシルフェ君が可愛いです(笑)
>「なあ、なんで髪切っちゃったの?」
髪を切った理由を「うっとうしかったから切った」と答えるレオシュですが、
かつて愛した人が髪の長い人だったことを考えると、髪を切るという行為は、
レオシュなりにシルフェが一番の存在であることを認めたということなのだなと思い、
非常に感慨深いものでした。シルフェ君が言うように、
「ロングも綺麗だったけどショートも似合う」のでしょうね。
そして、二人とも聖アルフォンソ学院の教員を目指すことになりました。
相談していたわけではないのに、二人とも学院の教員になりたいと考えていたのですね。
次作が先生編です!
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